有限会社大昇 代表取締役 宮田 周 氏

川崎市高津区において35年にわたって不動産業を営む「有限会社大昇」。
今回は代表取締役の宮田社長に経営への取り組みについてうかがってまいりました。

有限会社大昇様の事業内容についてお教えください

弊社は不動産会社なのですが、メインは駐車場仲介と管理業務となっており、全体の業務の4割を占めています。

元々は前社長である義父が昭和57年に立ち上げた不動産会社です。
創業当初から駐車場の管理業務をメインと位置付けたのは、駐車場の管理をすれば固定的な仕事になり、後々は売却の相談につながるという考えからでした。

ただ、そこから土地バブルがあり、それが弾けるという流れの中で、それまでは駐車場というものの扱いは「空いている所を貸しているだけ」だったのが、そこを「売るところ」「建てるところ」という今後に繋がるものに変わっていきました。

そこで、駐車場の「管理」を増やすことにより、そこから次の展開に繋げる方針が確立した、という経緯があります。

御社の強みは何でしょうか

まず、弊社は非常にエリアの狭い所で事業を展開しています。

高津区において「新作」「末長」及び「千年」という3つのエリアだけで、約1,600台の駐車場を管理していますので、駐車場を借りに来られたお客様のご要望に合わせた紹介ができるのが強みと言えると思います。

また、駐車場の掃除や除草などの管理は徹底して行っています。

駐車場の管理におきましては、そこまで手間をかけて管理している業者は少数派ですが、弊社は駐車場をメインに業務を行わせていただいておりますので、特に丁寧な管理を心がけております。

大家さんに対しては「手間なしの管理」をご提供したいと考えております。
具体的には、除草・残置物の処理・駐車場内のトラブル等、大家さんに方針を確認のうえ弊社側でスムーズに業務を行う体制を整えることで高い信頼をいただいています。

経営者となられた経緯について教えてください

仕事としては、文系の大学を出た後に塗装会社の現場監督を1年ほど務めたのですが、ここが今で言うところの「スーパーブラック企業」で、毎月180~200時間位の残業があり、朝8時に現場に出て夜12時までは会社にいるというのが常態化していました。

この会社を辞めた理由としては、先ほど申し上げた勤務状況のつらさは勿論なのですが、上司達が愚痴を言うだけでまったく会社のために働いていない内部環境を見て、会社の将来性に疑問を持ったという点がありました。

「これほど忙しく色々な事をしているのだったら、やりたい事は何でもできるじゃないか?」と思ったわけですね。

当時やりたかった事としては、個人的に車や機械が好きなので、「設計がしたい」と考えていました。とはいえ車の設計はできませんので、CADの勉強や職業訓練校に通う中で、ある派遣会社に勤めることになりました。

しかしながら、法学部出身でありノウハウもないので、当初は開発機器の実験を行う業務に就くことになりました。

実験を行い、どういう状況だったのかを報告する、という事をやっていたわけですが、当時のそこの会社の先輩達は良い人に恵まれ、実験だけではなく設計に類する業務も携わらせていただいていて、非常に満足していただいていました。

そんな中不況の波が会社を直撃し、「派遣社員を切ろう」という方向になったのですが、上司の方々は私に対して「もし良かったら社員にならない」か、と言ってくださいましたので、社員になってその会社のある高崎に行こうと考えていました。

しかし、それを妻(当時はまだ結婚していなかったのですが)に伝えたところ、「家族を置いては行けない」と言われ、また少し前から義父からは「うちの会社を継いでくれないか」というお話はありまして、丁度そのタイミングで正式にオファーをいただいたので、地元高津区の不動産会社にて3年ほどの経験を経て、この会社を継ぐことになりました。

経営者となる前に経営塾に参加されていたそうですね

はい。経営者同士の仲間という存在は非常に大きかったです。

私の実家は一般的なサラリーマン家庭でしたから、まさか自分が経営者になるとは思っていませんでしたが、義父と経営を引き継ぐ前から創新塾に参加しており、周りの経営者からの勧めもあったのが大きなきっかけとなりました。

以前は、志・ノウハウ・実績といったものが伴っていないと経営者にはなれないと思っていましたが、実際はそうではなく、周りの経営者の方も悩みながら経営をされていることを知ると同時に、私でも経営者としてやっていけると背中を押していただいたお蔭で経営者になる決断ができたのだと思います。

経営者としての哲学についてお教えください

哲学というか、もうすこし柔らかく言うと「地域貢献」ということになるかと思います。

ずっと地元密着で営業させていただいておりますので、町会、お寺、消防団、交通安全協会等で役員を務めさせていただき、少しでも地元に貢献できればと考えています。

この会社に入った当初の案件で、大家さんから老人施設を作りたいと相談をいただいた事があります。
当時は老人施設というものはほとんどない時代で、「将来流行るかもしれないけれど、資産運用としてはどうなのか」と言われていましたが、その方は「地域のためにこの施設が必要だと思うから作りたい」と仰いました。

当時の私はその方の意図を芯まで理解していませんでしたが、その後その方から非常に良くしていただき、町会等色々な所へお誘いいただきその姿を見ているうちに、元々地元に住んでいる地主は地元のために惜しみなく貢献されているという事がよく分かり、そういった方々について行きたいという気持ちに変わっていきました。

普通の方は消防団の活動などは面倒でやらないのではないかと思います。
ただ、私の周りでは面倒くさいという不平はほとんど出ないので、少し特殊かも知れませんが、そういった方々がいる中で仕事ができるのは良いなと感じています。

弊社のビジョンが「不動産業を通じて地元に貢献したい」という明快なものですので、地元の人が何か悩んだ時に頼ってもらえる不動産屋でありたい、と常に考えています。

経営の中で問題・課題があった際はどのように解決されますか

細かいところで言うと、不動産業はクレーム産業ですので、お客様からのクレームというものが非常に多くあります。

弊社は仲介業ですから、大家さんがいて借主がいて、その間に入っていますので、当方では判断を完全に行う事はできません。

双方の利害関係は相反するため間を取って丁寧に調整していくことになりますが、そのためにはまずは話をしっかり聞き、落としどころを探っていくことが重要です。

とはいえ、当事者の方々はそれぞれの立場を強く主張しますので、調整がなかなか難しい事もあります。

そういった時は、業界仲間や先輩、友人など、色々な方に相談しています。
「分からない事」は実行できませんので、多角的に意見を聞いたうえで自分なりにできるやり方を見つけていく、という姿勢で対処しています。

自社での取り組みで特に成果のあった施策などあればお教えください

先ほどお話した駐車場の掃除はかなりご好評をいただいています。
月に1回は必ずスタッフが行くため、こまめにチェックすることができますので、そういったところで大家さん・お客様双方から評価をいただいていると感じています。

実際この施策を徹底してからはクレームも減少しており、万一のクレームの際にもすぐに対応できる体制をとれる仕組みを作ることができたのは良かったかなと思います。

また、大家さんに対してはお客様からお預かりした賃料についての書類をお渡しするのですが、税務申告し易い書類を作成するよう心掛けています。
先方の税理士さんからの要望などにもできるだけ柔軟に対応しております。

経営者にとって必要な知識などはどのように勉強されていますか

本やセミナーでの勉強は随時行っており、創新のセミナーも分かり易くてよいのですが、自分に落とし込めない時や疑問が解決できない時には、やはり同じような悩みを持っている経営者のお話を聞き、それとリンクさせて勉強をしています。

経営の本を読んで知識として持っているだけでなく、そのうえで人と話すことで具体的な施策に落とし込む気付きになることが多いです。

創新では役員をやっていることもあり、おかげさまで多くの方との御縁をいただいており、そういった仲間の経営者の方達に相談しています。

創新塾の仲間とは3ヶ月に1回の経営報告会に参加させていただいており、そこで他社の経営に参画することが大きな学びとなっています。

また、大定例会などで知り合った経営者の方にお話しをさせていただくことでアドバイスや気付きを得られています。

今後の展望や目標などお教えください

大家さんとお客様、双方に対してのサービスを充実したいと考えております。

大家さんに対しては、さらに知識・ノウハウを磨いていくことでサービスの品質を向上していくことが重要だと思っています。
そのためには、私自身の研鑽が必須と考えます。

お客様に対しては、管理が多いのがメリットである一方、デメリットとして賃料を滞納する・契約を守らない方も一定数おり、その方達がメインのオペレーションになってしまっている、という問題があり、これに対応するために業務が固いものとなってしまい、それに対するお叱りを受けることもあります。

本来はしっかりお支払いただけるお客様に対して100%のサービスをさせていただくのが一番なのですが、現状としては滞納する方に対して会社のリソースを割いてしまっているので、ここを改善したいと考えています。

また、この度会社のメンバーとして義理の母がこの度退職することになり、会社のシステムが変わってくるタイミングとなっています。
これまでは、親族のいる家族経営の安心というものがありましたが、逆に親族がいなくなることで決断しなければならない事も多いので、会社がしっかり結束していけるよう心掛けていきたいと考えています。

そういった意味でも、経営者である私自身の成長していくことが重要であり、会社の成長に直結していくと強く感じています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

宮田社長のお話を伺っておりますと、人との繋がりやコミュニケーションをとても大切にされていることを強く感じました。

また、「不動産業を通じて地元に貢献したい」というビジョンを実践されており、これも地元やそこに住む人達とのつながりを重視しているからこそできることではないでしょうか。

有限会社大昇のHPはこちらから

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