「ああ、同じなんだ」

「続・大定例会」と銘打った「浜野製作所訪問イベント」でしたが、講話、見学、そして懇親会(というよりも飲み会でしたが)を終えた俺達の胸にはそんな感情が湧いてきていたのです。

大定例会にて基調講演として浜野代表よりお話を頂いた際、俺達が感じていたのは概ねこんな感じだったのです。
「すげえな」「こんな短期間で成果を出せるのはこの人だけ」「こんな例はそうそうあるもんじゃない」「JAXAとか、天皇行幸とか総理大臣とか、ありえんのだが」などなど。
つまり、「遠い世界の人」の様に感じていたのです。ですが、その反面俺達はみな経営に携わるような人たちばかりですから、こんなことも感じていました。
「いや、これは何かある」「これは深掘りしないわけにはいかない」「でかいヒントが隠されているな。絶対に知りたい」などなど。

こういった貪欲な創新ネットシティのみなさまの欲望・願望を叶えるべく企画された今回のイベントですが、まず驚いたのは「狭さと小ささ」だったのです。
墨田区の住宅街に忽然とあらわれる浜野製作所やスミダファクトリー。ファクトリーの窓を開けると手が届きそうな距離に普通の住宅があったのです。
そして始まった浜野代表による「深イイ話し」は、基調講演をベースとしていましたが、参加者からの質問や対談形式をとったこともあり、徐々に俺達の興味の真髄へ近づいて行ったのです。基調講演では語られなかった「泥臭い営業」の話は、今でこそ日本中どころか世界にその名をとどろかす浜野製作所ですが、軌道に乗るまでは俺達と全く同じように地道な努力を精一杯続けていた事がよくよく分かったのです。

浜野代表の講話を聴いていてじんわりと感じたのは、「揺るがない自負と謙虚な自信」でした。泥臭い営業を続けていって手にした小さな小さな仕事を大切にやり切る。それを繰り返すことで本物の信頼を少しずつ確実に手にしていく。その姿、道のりに特別なことはありませんでした。
一番大事なことをとことん大切にする、そんな浜野代表からはまじめな仕事人間の匂いしかしなかったのです。
私は今回、浜野代表と対談形式で進めていくつもりで臨みましたが、強烈に濃厚な企業の半生に飲み込まれ、気の利いた問答をほとんど繰り出せなかったのです。

先にも述べたように決して大規模な工場ではありませんでした。
ただ、浜野代表同様に「濃厚な雰囲気」を自然にまとっている工場、ラボラトリーだったのです。
見学の終盤、とある古臭い機械が目に留まり、浜野代表に問いかけました。
「浜野さん、これはもしかして・・・?」
それに対して浜野代表は
「そうです。それがあのケトバシです」と自慢げに、それでいて自分の息子を慈しむような眼でこたえたのです。

俺達はその時に確信したのです。「この会社は絶対に100年企業になる」と。
100年続く企業はほとんど例外なしに「創業当時の記録」を残しています。まるで100年前の時点で100年後に会社が存続していることを確信しているかのように。
浜野製作所にある「ケトバシ」はまさに浜野製作所の礎、オリジンそのものです。
その機械が工場の片隅にひっそりと置かれているのです。
当然かもしれませんが、古く汚れはあるもののサビひとつなく、しっかりと手入れされていることは想像に難くなかったのです。

濃厚な講話、100年企業につながる礎を感じた見学を終えて、俺達は当日の目玉とも言える懇親会場へと向かったのです。
道中にこれでもかと言うほど間近に見えるスカイツリーを見ると「ああ、やっぱり東京なんだなあ」と思っているうちに予定していた店に到着したのです。
「もつ焼き 稲垣」は浜野代表が大切に通っているお店だったのです。
長い年月の間に増改築を繰り返してきたであろうその店構えは、浜野代表曰く「サティアンのようだ」とのことでしたが、いわんや正にその通りだったのです。
正面入り口から店内を通過し、裏口から離れに続き、急な階段を上がったそこに「ザ・昭和」の空気を醸す何とも言えないほどに居心地の良い空間が俺達を待っていたのです。

看板に偽りはなく極上のもつ焼きを俺達は堪能したんですが、酒が進むにつれ浜野代表のトークも熱を帯びて来たんです。
その話は俺達が飲んで話す、会社に対する考えや経営に対する課題などと何ら違いのないものに聞こえたのです。
ただ、先に述べたようにそこには「成し遂げ続ける人の自信」が満ちており、そういった言葉は俺達をさらに引き込んでいったのです。

俺達も急激に狭まる距離感にリラックスして、様々なことを浜野代表に聞いたのです。
返される言葉はどれも「将来を、未来を見据えている人」から出てくるものばかりだったのです。
「おおお・・」と感心していたら、浜野代表からちゃんと下ネタもご披露頂いたので、俺達はさらに距離が近づいたような気がしたものです。

「続・大定例会」から少し経ったころ、浜野代表からメールが届いたのです。そこには丁寧な謝辞、俺達ネットシティに対するお褒めの言葉、そして何より「この度いただいたご縁・繋がりを更に深めさせていただきたいと願っておりますので引き続き、よろしくお願い致します」という何よりうれしい言葉がありました。
でも、浜野代表は特別なことをやり遂げてしまった経営者ではありません。地道にやるべきことをやり続けている人だったのです。
地域の事を大切にしているうちに、その輪がどんどん拡がっていき宇宙にまで行ってしまった人だったのです。
確かに「成果」は飛びぬけているかもしれません。しかし、浜野代表が、浜野製作所が大事にしてきたこと、これからも大切にしていく事は俺達創新ネットシティの面々と何ら変わることはなかったんです。
だから「ああ、同じなんだ」と、生意気にも感じてしまったのです。
あ~、もつ焼き美味かった!

文責 創新ネットシティ市長 田村俊一